イソップ童話だかに「王様の耳はロバの耳」という物語がある。
ひょんなことから王様の耳がロバの耳だと知ってしまった下僕あるいは農民(あれ、床屋だっけ?)が、どうしてもその事実を言いたくて、でも言ってしまうと処刑されてしまうから我慢しているという出だしで始まる。
結局、その農民は穴だか井戸に向かって、「王様の耳はロバの耳」と叫んでスッキリした。めでたしめでたし、そんな話だ。
王様の耳がロバの耳だってことは、井戸を通じて民衆に知れ渡ってしまったんだけど、そのあと果たして王様が自身の地位を護ることができたのか、農民は公開処刑を喰らってしまったのか、それとも勇気ある若者として幸せに暮らしたのか、そのあたりをイマイチ覚えていない。
自分で抱えきれない事実を知ってしまった時、僕だったらどうするんだろうか。
ロバの耳ぐらいだったら耐えられそうだけれど、たとえば大統領が火星人だったら!? うーむ、井戸に向かって叫んでも誰も信じてもらえないかもしれない。
とある先日、都内某所の某通りで、たしかに僕はノーパンの女性をこの眼で確認したのだ。
でも不思議なことに、その場所に5人も友人がいたのに誰一人として見た者はいなかった。
「いや、いたんだって、マジで」
「またまたぁ、それってほんとは見たいって願望なんじゃないの」
虚しい会話が繰り返されるだけだった。
「春先のOLはノーパンツー」
井戸に向かって叫びたい気分だった。果たしてあの女子の身に一体全体どんなことが起きたのやら。
罰ゲーム?ドッキリ?
生活して三十数年、東京にはまだトワイライトゾーンがあるようです。