春先に降る、ちょっと肌寒い小雨が好きだったりする。
土日に降られると、それなりにがっかりするのは、僕も同じで、平日に限っての話である。
物憂いな雰囲気の、せっかく薄着になったというのにタンスから厚手の長袖を引っ張り出す感覚。やれやれと思いつつも、古いアルバムをもう一度眺めるような期待感。ひっそりとした喫茶店で、うつらうつらと雨が降りそそぐ景色をボンヤリと眺めるのは格別である。
近くで猫がすやすやと気持ちよさそうに眠り込むのもよく分かるのだ。
それは季節がほんの少しだけ僕らに与えた、移ろいがもたらす静謐な気持ちなのだろう。