9月の後半だというのに、昼間は蝉が鳴きしぐれるという、まだ夏の面影すら残る某日、残業を終えて死んだ魚みたいな目をしつつ素っ裸でテレビ(ワンツッスリー)を観ていたら、矢追さんが「超ヤヴァイ宇宙人映像」をプレゼンテーションしていた。
思えば幼い頃から口裂け女やら狼男や地底人を半狂乱じみて妄信していた僕だけに、こりゃ見逃す手はないなと前のめりでテレビに齧りついた。
第三位から映し出され、十分すぎるほどに我々の心を鷲づかみした矢追さんが一位に持ってきた映像は、なんとブッシュ大統領の演説の真っ最中に紛れ込んでしまった宇宙人の姿であった。モノホンだとしたら、まさに全世界に衝撃が走る瞬間である。
引っ張るだけ引っ張り、もうはやく見せてよと若妻のようにおねだりする視聴者の目に飛び込んできたのは、相変わらずの好戦的な態度でブチまけているブッシュ大統領。
だが、それだけじゃない。な、なんと、ブッシュ大統領の後ろには、たしかに宇宙人が映って・・・いる。いや、ちょい待て、映っているのか、これ?
なんだか紙芝居の出来損ないのような白い宇宙人(グレイ型)がひょろひょろと映し出されている。どう好意的に見ても、こりゃなんかが窓に映っているだけじゃないかというシロモノなのだが、矢追さんは「この映像は宇宙人が常に地球を監視しているという警告なんですよ」とシャブ中みたいなことを本気汁だして説明していた。
矢追さんが宇宙人は居るというプレゼンテーションをしたのに、なぜか見終わった後は「あーあ、やっぱり宇宙人はいねーのか」と、全然プレゼンの影響を受けずしてションボリとケサラン・パサランやスカイフィッシュと縁のない日常生活へと舞い戻った。
さて、今日も残業を終えると山手線に乗って家路に向かった。
運悪くiPhoneの充電が切れてしまって音楽が聴けない。鞄に入っている村上春樹が訳したグレイス・ペイリーの「最後の瞬間のすごく大きな変化」は文章のリズムがスッと入ってこなくて頁が進まない。そんな悪条件が理由なのかどうしてか分からないが、ふと宇宙人のことがよぎって宇宙人について思い起こしてみた。
一般的な通説で、なんでアメリカだけと宇宙人が密約を結んでいると囁かれるのだろうと疑問に感じたのである。
宇宙人が地球にやって来ると仮説を立てると、宇宙人は二十億光年も離れた銀河の彼方からわざわざ訪れているということになる。二十億光年というのは光の速さで計算しても二十億年掛かるという意味で、もう話がでか過ぎて下手したらオッパイが縮んじゃいそうである。
そんな遠く離れたところからやってくる宇宙人は、超長生きか超科学力を持っているかのどちらかだ。いや、下手したら両方かもしれない。
だからインターネット程度の技術で騒いじゃっている地球というのは、はっきり言ってド田舎だろう。ハイテクのウォッシュレットだって、彼らから見てみれば肥溜めみたいなもんである。ボットン便所だ。宇宙人はもうDNAとか改造しまくりだから、お尻で笛が吹けたりしても不思議じゃない。たぶんウンコとかしないに違いない。
地球の生命体は、宇宙人視点では猫も杓子も人間も同じで、それぐらい地球レベルを超えた宇宙人がわざわざやってきて、どうしてアメリカだけと密約を結ぶのか、これが大きな疑問なのである。
ブッシュ大統領がぶらり途中下車して、日本の某県ほにゃらら郡うひょひょ村大字3の牧場にいる一匹の牛とだけ仲良くするか?ちょっと有り得ない気がする。どれこれも同じ牛で差異はない。
だから宇宙人だって、アメリカとだけ仲良くするなんて、アンバランスな密約はない筈だぜ矢追さん!って脳内でまとまったら2駅過ぎていた。