先日、久しぶりに映画の試写会場に行った。
汐留のヤクルトホールで宮藤官九郎が監督した「少年メリケンサック」をやっていたのだ。友人より招待を戴いたので、甘えさせてもらった。
最近はこういうお呼ばれの恩恵を授かると、なんだか大人になったもんだなぁとしみじみ感じるのである。
この「少年メリケンサック」、宮崎あおいが主演を演じる以外の情報は何にも持ちえていなかったものだから、まさかパンクが主題だなんて知る由もなかった。田口トモロヲがボーカルを演じているのだ。
いまじゃ俳優業に板がついているけど、元「ばちかぶり」のボーカルである。それだけでも観る価値があるじゃないか。
ひょんなことから、中年のパンクバンドのマネージャをすることになった悲哀の女子、バンド連中の物語。
まだ上映が先なので、詳細は割愛するとして、なんと言ってもこの映画を観て欲しいのは、元パンクな連中だ。僕らはすっかりナマクラなナイフになっちゃったけれど、やっぱりパンクが大好きなのだ。マーチン履いて唾吐いて、すべての根源は初期衝動にある。
これぞパンク魂。
佐藤浩市演じる<高円寺のシドビシャス>は、全然落ち着いていない、どうしようもない糞なオヤジで、本当に最高だった。ヤキなんて回っちゃいない。
パンクって気持ちよくて最低で、そしてカッコいいな。
「なんでガキみたいな客に笑われるのに演奏しに行くんだよ。もういいじゃないか」と泣き言をいうバンドメンバーに「やりたいに決まっているからだろ。やらないと・・・やらないと俺ら駄目になっちゃうんだよ。やりてえんだよ」みたいな科白を叫ぶ佐藤浩市はクールそのもので、全体にコメディ感が漂う映画だけれど、このシーンで泣きそうになった。少なくとも学生時代にバンドをやっていれば心に迫る言葉だ。
初期衝動に忠実になれ。