先週末の土曜日は地球温暖化が遠のいているような寒い日々が続く4月とは違い、初夏を思わせるような晴天で、それは何となく季節がようやく移ろいだと風が教えてくれた一日でもあって、つまるところ、「嗚呼、あれから一年が経ったのか」と認識した日でもあった。
昨年のこの日はお見舞いをしていて、僕はきちんと思い出話に(そう、今思い起こせば、それは最後であったわけだけれども)花を咲かせていたのだ。
この日、何度か訪ねた道のりと同じように渋谷からバスに乗って、世田谷の某バス停で降り、墓前へと向かった。
深々と頭を下げて、お線香に火を灯した。そこで自分のどんな状況を報告したのか、不思議と思い出せない。何となしに「こっちはこっちで元気にやってるよ」とそんな事を懐かしむように話しかけた気がする。そして、また来るよと。
夕暮れには新宿ピカデリーで「第9地区」という南アフリカのSF映画を鑑賞した。
若干30歳の無名監督ニール・ブロムカンプが手がけた本作は、出演者も全員が無名。主人公のシャールト・コプリーに至っては、監督の友人だけど主人公役がいないから抜擢されたというくらい。
映画はネタバレになるので、触りだけ書くとすると、ヨハネスブルグの上空に突如現れた宇宙船。そこに詰められていたのは、なんと難民の宇宙人だった・・・。
そこはかとなく漂うB級センス。従来のSF映画に登場する宇宙人とは異なる人類のお荷物な宇宙人。難民キャンプへと直行する宇宙人。
南アフリカといえばアパルトヘイトなわけだけれど、その黒歴史をあえて踏襲した苦いユーモアのセンスに脱帽した。それを人間でもないエイリアン(異星人)に当て込む脚本はこれまで誰が思いついただろう。
他にもアフリカでは有名な国際詐欺のネタがこっそりと使われていたりして、なかなか社会的なネタを投入している侮れない作品だ。少々スプラッタな画面もあるけれど、見ごたえがあるので観て欲しい。
この作品とはまた別に、「月に囚われた男」というイギリスのSF映画が恵比寿ガーデンプレイスで上映している。この映画館は佳作を流すので有名なだけに期待が高まる。
イギリスのSFという触れ込みだけでとりあえず観てみたいのは僕だけだろうか。
行く人いないかな。