<かんずり>という言葉、なかなか聞きなれない言葉である。漢字で書くと寒造里で、収穫された唐辛子を塩漬けにして、雪がしんしんと降り積もる真冬に意図的に雪の中に数日の間さらして、唐辛子の持つアクや辛味を抜いて角を取り、麹、みかんの皮、ごま、青さ、麻の実、けしの実、柚子などと漬け込んで熟成させた雪国の調味料である。ぬれ七味というのは本当に濡れているという訳ではなく、その醪と混ざった唐辛子の様相を表現したのであろう。
さて、この「かんずり ぬれ七味」のうち、何年も熟成させたそれは格別で、もちろん相当の時間と手間を掛けて完成しているのだから、他の熟成物がそうであるようにこれもまた貴重な一品になる。3年熟成させたその味は、辛味噌や辣油のような直球の辛さではなく、まるでカーブを描くようにまろやかで味わい深く、辛さの中に漬け込んだ風味が同時に折り重なって複雑な旨味を醸し出しているのだ。
これを炊きたてで熱々のご飯に乗っけて頬張ってごらん。「かんずり ぬれ七味」だけでも十分にいけるし、納豆に混ぜて乗せても格別だ。口中にパッと辛さが広がり、おかずいらずである。ぜひ食べていただきたい。
もちろんご飯だけにはとどまらず、鍋や冷奴へいれちゃってもいい。柚子胡椒とは異なる旨味だ。雪国の生活の知恵が凝縮された一品である。