村上春樹のエッセイにもあるように、香川県におけるうどんというものは、明らかに他の都道府県が考えるそれとは異なり、言ってみたら、ブラジルにおける牛肉のような圧倒的で丁重な位置に聳え立つ食べ物である。
高松駅の周辺だけでも幾つのうどん屋があるのか分からない。誰か数えたことがあるのだろうか。その幾つかのうどん屋のうち、高松駅から徒歩2分、朝5時から15時のわずかな時間で営業をしているのが「味庄」だ。
高松でいうセルフ形式のうどん屋である。まあ、セルフといっても無人というわけではなく、自分で天ぷらやらお握りやらを取る、そんな意味である。
※こんな感じに自分が食べたい天ぷらやらおにぎりを手前にある皿に適当に乗っける。ぶらっとチャリンコで立ち寄った兄ちゃんは口笛吹きながらまさに適当に取っていた。平日9時半の出来事である。
写真は冷やしぶっかけと天ぷら(250円と80円x2)。
店の中に製麺機があり、そこで麺を実際に打っている。自家製麺である。老夫婦に「ぶっかけ頂戴」っていうと、すぐさま出てくる。天ぷらは自分で取る。前払い。近所の工場で働いているのだろうか、作業着を着たおじさんたちがひっきりなしにやって来ていた。
うどんの他に乾燥わかめと天かすが入っていて、醤油の出汁は結構甘めである。あっさりとしているので、ファストフード的にペロっと食べてしまう。確かに東京で食べるうどんとは何かが違う気もする。ご当地という言葉で簡単に括れない何かがある。ローカル番組を眺めながらズズッっと啜っていると、遠くに来たなぁと感慨深くなり、うどんの味にも風味が漂うものだ。天ぷらは可もなく不可もなく、あると安心する、そんなテイストであり、これがうどんとよく合うのだ。
味庄
香川県高松市西の丸町5-15
5:00~15:00
土曜祝日、定休
天ぷら --\80
おにぎり --\130
いなりずし ーー\150
ぶっかけ(小) --\250
ぶっかけ(大) --\350
肉うどん(小) --\370
肉うどん(大) --\450
玉売りうどん --\70
他多数。
一応、部長同行なので、ほとんど付着物みたいな存在。それでもヘマをしたら報復人事でも喰らってしまうので、熱い広島の夜はシンデレラタイムで幕を引いて、原爆ドームぐらいで観光を抑えた。
高校の修学旅行先はたしか広島で、原爆ドームを見学したけれども、将来の夢は「シドビシャス」って書くような、当時、興味の大半を占めていたのは、焼き焦げた少女であったり溶けた老人のなんとかであったりと、どちらかといえば猟奇的なグロテスクなブツを拝みたい気持ちで一杯だったのに対して、さすが30代、血中の演歌濃度もいい感じに高まってきたのか、あるいはヤキが回ったのか、ずいぶんと感傷的に涙もろくなり、平和なんてものを考えるようになった。
広島市内を蟻の巣のように巡っている路面電車に乗り、原爆ドーム前に向かう。
30代の曇りすぎた目に映る原爆ドームは、当時とはまるで異なった。
正直言うと、路面電車で150円払うときから泣きそうになっていた。
鶴の折り紙なんて、折り方を知らないので、心の中で折ったつもりになって、黙祷をした。
涙がぽろぽろと零れた。
およそ半世紀ほど前にここで日本人が20万人亡くなったのだ。
罪もない、当たり前の生活をしていた庶民が。胸が締めつけられた。
安直な感傷には唾を吐く人間でありたいとずっと考えていたし、これからもそうありたいと思っているので、インスタントに泣きたくないんだけれど、我々の先輩達は犠牲になったのだ。
そんなことを考えれば考えるほど、涙が出た。
そして、ちくしょーって思った。たぶんアメリカ人だろう、団体の白人連中がワッハッハとか、うかれて写真を撮っているのを見ると、拳が固くなった。
なんかこう、もう少し詫びるような気持ちで見れないものか。
って、奴らはどちらかというと原爆ドームを「勝利の象徴」として見ているのかもしれないな、なんてことも考えた。
中国人は必ず箸で蝿を掴んで、黒人は全員ブレイクダンスができて、アメリカ人は360日ぐらいジョークを言い合っているというのが僕の偏見なので、アメリカ人の思考については色眼鏡で見る癖がある。
でもね、たしかに日本は原爆落とされて先の大戦で敗北をしたし、歴史は勝利者の目でしか語られないとしても、我々は唯一の被爆国として世界に発信し続ければならない。
原爆落とすのはやり過ぎじゃないか?土下座してくれとは言わんけど「アレは人としてやりすぎました」ぐらいの謝罪は求めたい。
つか、オバマは平和記念公園でひれ伏して謝ってもいいと思う。
そんな悔しい気持ちと20万人を一瞬で抹消した歴史的事実を憂いていたら、もっと涙が出てきた。
本当に。
悪い奴らじゃないのも承知だけれども、少なくともアメリカ人がのうのうと広島うろついているのは悔しい。
ER緊急救命室で切羽詰ったジョン・カーターが醸し出すようなシリアスな顔ぐらいは持ち合わせるべきである。
高円寺駅北口を降りて、純情商店街を少し歩いた先の左脇路地にあるのが、この「麺屋 はやしまる」である。うっかりしていたら見逃しそうな立地にも関わらず、繁忙時間を過ぎても客足の絶えない人気店だ。店内はカウンター10席ほどで、珍しく食券機がない。
写真は醤油らーめん(700円)。
鶏がらと鰹だしが絶妙に絡み合ったスープは油膜が熱々で、中太の麺と相性がよい。焼豚はかなりあっさりしているので、しつこくなく食べられる。高円寺で呑んだ後に、立ち寄って締めラーに丁度いい、そんな味だ。
こちらは塩わんたんめん(880円)。
たっぷりとした肉汁が溢れるわんたんが惜しみなくお椀から顔を出す。わんたんは香辛料がよく効いている味で、これまた塩スープに調和する。こちらも鶏がらスープがあっさりとしていて優しい味。
麺屋はやしまる
杉並区高円寺北2-22-11
月~土
11:30~23:00
日、祝
11:30~21:00
水曜日(祝日の場合は営業)、第2・第3火曜日、定休
つけめん(醤油・塩) --\750
わんたんめん(醤油・塩) --\880
らーめん(醤油・塩) --\700
ちゃーしゅーめん(醤油・塩) --\900
他多数